社会構造が複雑化すると何が起きるのか - 拙著「新・日本通鑑2」より

2017/09/09


 
その6では、「食の調達コスト」という言葉を何度か使用しています。
食の調達コストとは、何でしょうか。調達コストが増大すると、どのようなことが起きるのでしょうか。
 
食料を充分に確保できないと、田んぼや畑を切り拓くなどして食料の増産を試みます。あるいはより遠方に赴き大量の魚を獲得したり、動植物を捕らえます。
つまりこれが「食の調達コストの増大」です。
労働時間が増え、体力を余計に費すわけです。結果「余暇に回す時間や体力が減少し、社会における精神面文化面の発展が阻害されます。

縄文時代から弥生時代へと移行する際、この傾向が顕著に表れます。「芸術はバクハツだ」的な(笑)、ゴージャスなデザインの土器はなくなり、簡素な土器のみとなりました。また、衣服なども随分と質素になっていたことが判明しています。アクセサリーも減少します。
そんなモノに凝っていられる程、生活に余力がなくなっていると考えられるわけです。もちろん幸福度も減少します。
 
同時に、集団で一致団結して労働を行う必要が生じました。
山を切り拓き、低湿地を埋め立て灌漑設備を構築するのは、1人では無理です。そのため集団が形成されます。
知恵を出し集団を指揮するリーダーが登場し、さらに集団の大規模化に伴い中堅幹部が登場し・・・・という具合に、集団のピラミッド構造が出来上がってきます。
 
そして、獲得したリソースを集団内でどう配分するか、どう維持、増大していくか、といった問題が生じます。これが「政治」です。政治という概念が登場すると、シンプルな「集団」から「社会」へとステップアップします。社会の各部が「組織」となり、「複雑化」に拍車がかかります。
 
「リソースの配分」は、非常に難しい問題です。どうしても集団なり社会の内に、配分の偏りが生じます。リソースの長期貯蔵、蓄積が可能になる頃には、必ず「富」の偏り、格差が起き始めます。
そこに、「欲」が生まれるのです。
 
この「欲」というのもまた、「争い」を増大させ「幸」「平和」を毀損する要因です。
 

  1. 第一の要因が、『衣食住の持続的確保』
  2. 第二の要因が、『欲』

 
というわけです。
もちろん他にもいろいろあるでしょうけれど、突き詰めて行くとこの2要因に帰結します。縄文時代、そして弥生時代の歴史から、そういったことを学べるわけです。
 
欲というものは、必要以上に抑制する必要はありません。欲は人間の生命力の源泉でもあります。全くの無欲を目指すと、「生き甲斐」「生命力」を失いかねません。
しかしながら、必要以上に追求して良いものでもありません。集団や社会が有する「リソースの総和」を意識しつつ、適度な範囲に抑制するべきなのです。
「私の適正な『取り分』は、こんなものだろう」
と自らを律し、程々に抑えるべきなのです。バランスが大事です。
 
また、社会構造の複雑化が「欲の増大」に影響することが解ります。組織とは、可能な限りシンプルな方が良いのです。これは企業等の組織論にも通じます。
複雑だからこそ、リソースの適正な配分が見え難くなります。そこに、他人に気づかれないよう詐取する余地が生じたり、組織に寄生し配分を掠め取る者が現れます。
 
ちなみに、この「リソースの配分」を比較的巧く解決していたのが、江戸時代です。その辺りについては、またいずれ機会を改めて解説致します。
 
さて、そういった視点で今日の日本社会を眺めると、如何でしょうか。
まさに「欲全開」です(苦笑)
 
自由主義経済とは、
他者をダマし、貶め、奪ってでも欲を追求することを是認する
という経済思想です。ですから自由主義経済社会とは、
「『争い』なんざ起きて当然。平等!? ンなもん知らね~よ(ワラ)」
と開き直っているわけです。リソース配分のバランスなどといった発想は全くありません
 
そのため常に血みどろの争いを続け、勝ち続けることを要求される社会。ヨーロッパが生んだ社会思想です。
「幸福度」や「平和」といったものさしを片手に、日本古来の社会思想と比較すると、実に低レベルなのだと気付かされます。
 
欲全開のやりたい放題を是認する一方で、そのマイナス面を補うという発想が、「社会福祉」です。弱者救済思想です。
しかしこれとて、うまく機能しないことは、現実の日本社会を眺めれば一目瞭然です。社会福祉という思想、システムは、
「社会が常に成長、規模拡大し続ける、右肩上がりであり続ける」
という条件において、かろうじて成り立ちます。ひとたび下降傾向に陥れば、途端に破綻します。
 
今日、年金や生活保護システムが崩壊寸前にあるのは、まさに当然の結果だと言えます。自由主義経済社会というのは、長い歴史によって培われた日本の社会思想に照らし合わせると、しょせん「まがい物」に過ぎないのです。
 
 
その8へ続きます。