国民主権!? 今日の税負担は江戸時代よりも高い

2015/11/02

現在の日本における、私達国民の税負担は、いかがなものでしょうか。
拙著「 だからこそ『憲法改正』 ~ 欠陥だらけのインチキ憲法がインチキ国家を形作る ~」に 、幸田のものすごく大雑把な計算(笑)を記載しています。
 
まず、年間の日本人全体の稼ぎです。
正確な数字は不明ですが、目安となる数字は国民総所得でしょうか。2014年度の数字でざっと530兆円程度のようです。
 
対する、納税額の総計はどのくらいでしょうか。
これまた正確な数字は不明ですが、政府の一般会計と特別会計の歳入総額から重複分を除くと、ざっと240兆円です。
さらに地方税を加算すると、これまた大雑把な数字になりますが総額で330兆円程度となります。

ということは、日本人全体で1年間に530兆円程度稼ぎ、そのうち330兆円程度の税金を納めている、負担している、ということになるわけです。
その負担率は、なんと62%強!!
それだけではありませんよね。実質税金と呼べる、年金や健康保険などを加えると、もっと負担率は大きくなります。
つまり私達国民は現在、平均して60%を大幅に超える税を負担しているということです。
 
これは驚くべき数字です。
洋の東西を問わず、歴史上これだけの高負担はおそらく例がありません。
暴君による専制国家でさえ、もっと負担率は低いです。稼ぎの半分以上も巻き上げるような国家は、早々に反乱が起きて滅びます。
 
ところで参考までに、江戸時代の税負担はどうでしょうか。
 
教科書には「四公六民」が後に「五公五民」になった、などと書かれ、いかにも今日より庶民の負担が高かったような口調です。「慶安の御触書」などが紹介され、いかにも庶民が貧しい生活を強いられていたかのような印象を刷り込まれます。
 
ん?
仮に「五公五民」つまり税負担率50%だったとしても、今日の税負担と比較して極端に高いとは言えませんよね。生産性の差や社会福祉の問題などあり、単純比較はできませんが、むしろ今日より軽いとも言えます。
 
いえ、それどころではありません。少し調べてみると、とんでもないことがわかりました。
 
四公六民だとか五公五民というのは、
「名主(庄屋)や地主が地域単位で拠出した分の、地域と為政者の分配率」
だそうなのです。
そこには職人や商人は含まれません。それどころか農業従事者の大半を占める、小作人も含まれません。
つまり士農工商のうち「農」の、それも田畑持ちだけが徴税の対象なのです。課税対象者は極めて少数なのです。
 
しかも、それらに対する実質的な課税はなかなか高まらず、八代将軍吉宗時代の35%を最高に、以降30%を超えることはなかったそうです。五公五民(5割)どころか3割以下だったのです。
 
その他、町人からも徴税していましたが、これは微々たるものでした。商人に対しては、
「卑しい連中から徴収するのは潔くない」
という考えがあり、彼らの収益の割には微々たる負担率でしかなかったようです。ですからそれらを全て均してみると、江戸時代の税負担率は、今日のそれと比べて驚くほど軽かったことが想像できます。
 
国土狭く天然資源乏しく、そのくせ人口が多く、しかも武士という非生産者がたくさん存在するにもかかわらず・・・・です。
 
いかがでしょうか。
 
私達は学校教育によって、あたかも、
「江戸時代とは支配階級の圧政によって庶民が苦しめられた、暗黒の時代」
であるかのようにイメージ付けられましたが、実情は随分異なるようです。
「皇室、将軍、大名や武士から庶民に至るまで『均しく貧乏』で、死亡率が高い分平均寿命も短かったものの、概ね均しく大らかで幸せな社会生活を営んでいた」
と言う方が適切なのではないでしょうか。
 
前述の税負担率だけでなく、豊かに花開いた江戸の庶民文化などがそれを肯定しています。
循環型で、持続性を重視した極めて成熟した社会だったと言えます。学校教育によってイメージを歪められているのです。
 
目を転じて今日の社会を眺めると、どうでしょうか。
ここまで税負担率が高くて、豊かで幸せな社会を実現できるとは、幸田には到底思えないのです。
しかもここで忘れてはいけないのは、現在の日本は国民主権国家だということです。
「国民様が一番エラいはずの国家でありながら、武家に支配されていた時代の被支配階級以上に納税している」
という点です。
 
しかも、納めた税がどのように使われるか、主権者たる私達国民が一切コントロールできないのです。
政治家がどのように予算を組み支出しようと、勝手にどんどん税負担を上げようと、主権者たる私達国民には一切制御不能なのです。
一体どこが、国民主権国家なのでしょうか。民主主義国なのでしょうか。
 
今日の日本社会には様々なウソが潜み、様々な欠陥やインチキが存在します。
この問題について、今後引き続き、視点論点を提示していきたいと思います。