一番必要なのは「利他の心」
宮崎の県北のある有名なだんご屋さんは、もともと野菜を売っておられた創業者の方が、野菜を売る傍ら、お客様へのサービスとして団子を作ってプレゼントしていたら、それがあまりに人気があるので、本格的なビジネスとして取り組み、今の隆盛に至ったという話を聞いたことがあります。
また、あのホンダも、まだ自動車メーカーとして有名になる前、まず大型バイクでアメリカ進出を図ろうとして、なかなか売れずに苦しんでいたところ、社員の業務用として持ち込んでいたカブに注目が集まり、方針変更をして大型バイクよりもカブに力を入れたところ、その後の急成長につながったという話も聞いたことがあります。
(この話は著名なエコノミストの吉崎達彦さんがここの3月4日の投稿で紹介しています。http://tameike.net/diary/mar13.htm また私の友人のらくちんさんもここで紹介しています。http://rakuchin.at.webry.info/201303/article_7.html)
これらは一見、偶然の産物の話のように思われ、ビジネスの鉄則とは無関係の出来事のように思われるかも知れません。
しかし、これらのエピソードは、真のお客様本位、つまり自分の意図をお客様に押し付けるのではなく、むしろ、まずお客様が喜ぶものを提供することこそがビジネスの成功の秘訣であることを物語っているのではないかと思います。
別の言い方をすれば、「利己」より「利他」の心で仕事をするということだと思います。
よく「選択と集中」とか、自社の得意分野を見極め、そこにカネと人を集中することが経営戦略上必要だという話を聞きます。「コアコンピタンス」という言葉も耳にタコができるほど聞かされます。
でも、この考えが「利己」の心に支配され、お客様の求めるものとかけ離れてしまったら、絶対に成功しません。
「自社の強みを伸ばす⇒自社の儲けのみを優先する⇒結果的にうまくいかない」という悪循環に陥ってはいけません。
江戸時代に商人の道を説き、アダムスミスの「国富論」よりも37年前に「都鄙問答」を刊行した石田梅岩は「富の主は天下の人々なり」「売り先の心に合うように商売に情(せい)を入れ勤めなば、渡世に何ぞ案ずることの有るべき」「実(まこと)の商人は先(相手先という意味)も立ち、我も立つことを思うなり」などと述べています。
このような、かつての日本人が大切にしていた考え方が、実は今のビジネスにも必要です。
下記の稲盛和夫さんと瀬戸内寂聴さんの共著「「利他」人は人のために生きる」も、そのことを教えてくれていると思います。
読谷山 洋司
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